皆さん、旅はお好きでしょうか。
旅先を決めたり、行程を考えたりするのはとてもわくわくします。
そんなとき、ガイドブックを見るもの良いけれど、ちょっと違った楽しみ方を教えてくれそうな一冊があります。
「建築家なしの建築」。1964年に出版された、バーナード・ルドルフスキーという人の著作です。
この本には世界中の街並や建築物が紹介されています。載っているのは、所謂「建築家」が設計したものではなく、土着的、風土的な建物。
世界中にはたくさんの人が生活していて、それぞれの場所の地形や気候に合わせて様々な生活スタイルや建築様式を発展させてきました。
限られた技術や材料の中で、多少不便かもしれないけれど、その場所を住みこなすために作られた建築はどれも、「生活」に密着していることがよくわかります。
「生活」には、実はその場所の風土や気候から滲み出てくるものがたくさん含まれています。だから旅行に行って、その場所ならではの風景に出会うと、僕達は嬉しくなるのだと思うのです。そういう喜びが、生活を快適にするには大切だなあと考えています。
「建築家なしの建築」に載っている建築が建てられた時期に比べると、現在、私たちは様々な技術を手に入れ、とても便利に暮らすことが出来ます。
便利さに気を取られるとうっかり忘れてしまいがちですが、風土や気候、地域性を取入れることで、もっと生活を快適にする建築を作れるはずです。
そのことを忘れないために、たまに本棚から取出してページをめくりたくなる一冊です。見ているうちに仕事を投げ出して旅に出たくなるという困った副作用もあるのですが…。
図版が多くて文字数が少ないという、素晴らしい(笑)本なので、ぜひ手に取ってみて下さい。