昨日紹介した「建築家を知る/建築家になる」は文章主体の本でしたが、本日はヴィジュアル重視の本から紹介します。

アイラン・カン-内なる本棚

AIRAN KANG 2006-2010
「アイラン・カン-内なる本棚」(2010年、NOHARA)は、一昨日紹介した同名の展覧会のカタログを兼ねたアート・ブックとして出版されたものです。主に展覧会場の写真が使われているのですが、すべて私が撮影したものです。文章も寄稿しています。また「AIRAN KANG 2006-2010」(2010年、Gallery Simon)にも私が設計し、撮影した展覧会場の写真が多く使われています。
私は以前から写真という表現形式に建築と通じるものを感じ興味を抱いており、写真家の知り合いも多く、絵画や建築よりも写真の展覧会をよく見に行っている気がします。なかでも自身の設計したものをきちんと撮影するというのは結構貴重な体験です。建築家の性として、建築や空間を(自身の設計したものでなくとも)「作る」という視点で見がちなのですが、きちんと構えて写真撮影をしていると、それがしだいに客観的な「見る」という視点に変化していくのを感じることができるのです。その感覚は、特に人や社会と関わり続ける建築という表現にとって、重要なものだと思っています。

泉岳寺近くの電線
あとこちらはスナップショットで、だいぶ毛色は違うのですが、数年前から継続的に電線の写真を撮り続けています。実は都市景観的な意味性はほとんど意識しておらず、純粋に映像的な印象を切り取るような行為です。電線を意識した途端に街の風景が一変して見えるのはなかなか面白く、「普段見えているのに見えていないものを、見る」という訓練にはなっていると思うのですが、たまに急に上を見ながらうろうろしだすので、一緒に歩いている方にはご迷惑をおかけしてしまいます。最近の電線写真はこちらでご覧いただけます