
この「東映デジタルセンター」は、最先端のデジタル映像編集、スタジオ機能を備えた、次世代ポスト・プロダクション拠点として、東映東京撮影所内に本年オープンした建物です。全体設計は大和小田急建設さんが担当され、山本想太郎設計アトリエでは、建物の外観デザインと、ほぼ全室の内装デザインの設計協力を行いました。
このような形での建築への参画は、その業務期間、コントロールできる設計内容の範囲とも、通常の統括設計と比較してある程度限定されるものです。そのような特殊な仕事を建築家が行う場合、自身が「建築家である」というスタンスを保つことは非常に重要な意味を持つと思います。「東映デジタルセンター」についても、内外装デザインの提案、色彩計画などを主に求められたのですが、私としては常に建築・計画全体を見渡して、それが良いものとなるために個々のデザインがどのように貢献し得るか、ということを重視して提案を行いました。結果として私のデザインが建築の中で特別に目立った要素となるのではなく、建物そのもののコンセプトとして、自然に一体化することを目指したのです。



私は他にもインテリア、リフォーム、展覧会場、アート制作といったいろいろな仕事をすることがあるのですが、それらに取り組む場合でも、基本的な考え方は同じです。特にデザインやアートのようにいろいろな特質の技能者が集まる世界では、自身の特技を効果的に発揮することが仕事の価値そのものとなります。単体として美しく印象的なデザインだけでなく、それをとりまく時間や空間といった文脈との「連続性」を生み出せることこそ、建築家の表現の特徴=武器なのだと考えています。