「大地の芸術祭-越後妻有アートトリエンナーレ」は、新潟県十日町市・津南町で、2000年から3年に一回開催されている、世界最大級のアート・イベントです。2009年に開催された第4回のトリエンナーレの記録集が、今年発売されました。

私は第3回のトリエンナーレから参加し、アート作品の出品だけでなく、現地で空家となっている民家をアーチストと一緒にアートの家として再生するという「空家プロジェクト」にも、建築家として参画しています。2009年の出品作品「建具ノニワ」では、地元の方々に呼びかけて集められた古い木製の建具を約150枚使い、旧タバコ倉庫の中に散策するような空間を作りました。



建具ノニワ
このイベントのように美術館の中から飛び出してアート製作・展示を行うような場合には、やはり「場」との関係性を意識することが重要となります。「空家プロジェクト」でこの地域の家を100件以上も調査するなかで、「農業を中心とした田舎の家」として一括りに考えていた民家にも、実に多様で個性的な営みが表現されていることがわかりました。そこでそのような多様性を象徴するように様々な形をした「建具」を使って、この地域のリアリティーを表現しようと試みました。また「ニワ」とはこの地域で家の中の土間空間を示す言葉でもあります。冬季に雪深いこの地域では、かつては家の中で牛を飼い、いろいろな作業も行っていたのです。イベント期間の終了とともにこのアートは解体されてしまいましたが、訪れた方々に、ただアートを「見る」だけでなく、少しでもこの地に「居る」という感覚を持っていただけたなら良かったと思います。
この作品は上述の2009年記録集に掲載されています。そして、来年には次回2012年に向けての公募などの動きも始まると思います。