遠距離移動<池村圭造>

高校生になった時分から、学生の頃は遠距離通学、働き出してからは遠距離通勤と、もう、三十年近くも遠距離移動を続けています。一日の1/8、起きている間の1/6近くの時間を、ほぼ毎日、電車に揺られて過ごしていることになります。
電車の中は、本を読んだり、音楽を聴いたり、うとうとしてみたり、中吊り広告から世間の様子をうかがったり、図面を広げ三角スケールを取り出して仕事をしたりと、要するに、自分だけのレクリエーション(と、少しの仕事)の場所になっています。
座るときのポジションは、断然端っこ派で(なかには、真ん中の席が好きというひともいるようです)、もっというと、電車の加速に身体が流されない、進行方向と反対の側の端っこが好きです。背もたれと横板との隅にスポッと身体がおさまる、おさまりの良さみたいなものがいいんだと思います。ちなみに、ソファーも端っこが好きです。


シート



などと、つらつら考えながら、今日もホームで電車を待っていたのですが、ふと、上を見上げてみると、昨夜からの雨があがって空は晴れているのに、列になった無数の蛍光灯が煌々と点っていました。


ホーム


到着した電車に乗り込むと、やはり電車の中にも蛍光灯が点いていました。気になりだすと神経質にもなるもので、電車を降りて外の道を歩いても、信号の表示灯、車のブレーキランプ、果ては手にした携帯電話のバックライト。そして、事務所に着いて、やっぱり照明のスイッチを入れ、コンピューターを立ち上げて、そのバックライトを顔から浴びました。

信号灯やブレーキランプのたぐいは、さすがに極端なので置いといたとしても、日々、遠距離移動をしている自分の場合、一日のうちで自然光だけを受けているのは、乗り物に乗っていないで歩いている間の、せいぜい一時間程度で、起きている時間の1/18。残りの94%以上の時間は、何らかのかたちで人工光にあたっていたのです。
まちのあかりに感謝しながらも、自然光だけの環境というものの希少性を感じてみたりしたのでした。



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この記事へのコメント

  • 1,
  • めめさん
  • 2011/02/19 01:43
思い起こすと本当にそうですね!
自然光だけというのは、敢えて意識してそういう環境に身を置かないと難しい気さえしてきました。
今まで考えたこともない着眼点をお話ししてくださってありがとうございます。
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